これまでに、アルファロメオの名前のことに関する記事「アルファロメオという名前part2 ~スペースへのこだわり~」と、アルファロメオのエンブレムに関する記事「アルファロメオのエンブレムとカーデザイン ~ぎゃーと叫んで~」を書きました。今回は、その二つの記事と関係する内容です。
その二つの記事を書いているときから、エンブレムに関しては、一つの疑問点が残っていました。何れはその疑問点についても書こうとは思っていましたが、どうもそのことに関して、頭の中がもやもやしていて、すっきりしない感じなので、そのまま放置というか、頭の引き出しの中に残しておくようにしていました。
アルファロメオの名前のスペースのことや、アルファロメオのエンブレムの模様のことについては、自分なりの発見があって記事にしたのですが、もう一つの疑問点については、どうしても自分なりに納得できないところがありました。すっきりしていない状態で書くのは、ちょっといやというか、あまり書きたくないので、そのまま残しておきました。
その後も、ときどきは、アルファロメオの歴代エンブレムヒストリーのサイトを見ては、うーん、、、と悩んでいたのですが、ようやくあることに気付き、自分なりに納得できた部分もあったので、そのことについて書いておこうと思います。分析、推論は、まだ不十分なところがありますが、部分的に思ったこと、わかったと思われることがありますので、それをこの段階でまとめておきたいと思います。
なお、以下の内容は、あくまでも私の推論に過ぎません。推論が事実と異なっている可能性も十分あります。異なっていても、一個人の意見、推論ということで、許してください。エンブレムに関する実際の資料などを調査したりして検討したわけではありません。あくまでも、公式サイトに載せられている写真からの推論です。
まず、自分の中に残っていた一つの疑問点の中身です。それは、エンブレムの外周に近いところに書かれている「ALFA ROMEO」というアルファベットの部分の、位置、並べ方です。
前回同様、写真の引用をしないので、わかりにくいとは思いますが、公式サイトのエンブレムを適宜参照しながらということでお願いします。
この「ALFA ROMEO」という表記については、これまでいろいろと変化してきています。現状ではこのように間にスペースを空けた表記となっていますが、以前は「ALFAーROMEO」と間にハイフンが入っていました。また、ロメオさんが経営を握るまでは、ROMEOの部分はなくて、単にALFAだけの表記でした。
以下、初代エンブレムから順に、「ALFA ROMEO」という表記の仕方について分析していこうと思います。
1910年。初代エンブレムでは、ALFAという表記だけでした。ちょうど12時のところを中心として左右均等にアルファベットが配置されていました。12時よりも左側には、ALの2文字が配置され、右側にはFAの2文字が配置されていました。ALFAの文字数は4。左右対称に配置すると、その中心はLとFのちょうど中間となります。初代エンブレムでは、12時の位置がちょうどLとFの間になっており、4文字を左右に均等に分割するような形で対称に配置されています。
デザインの左右のバランスを考えて12時を中心として左右対称に配置しようとした場合、文字数が偶数だと、中央には文字が来ません。文字と文字の間の空間が、12時の位置になります。一方、文字数が奇数の場合は、ちょうど真ん中の文字が12時の位置になります。文字数だけで左右のバランスがとれるとは限りませんが、とりあえずここではその話はちょっと置いておいて、シンプルに文字数だけで考えてみます。
初代エンブレムでは、4文字で、原則どおり、左右に2文字ずつ配置されています。ALFAという文字も大きく、一文字、一文字、間隔をとりながら、余裕をもって配置されていて、見た目のバランスもとても良いと思います。
ところがところが、ロメオさんが経営トップになったことで、話がややこしくなります。ロメオさんの表記は、「ROMEO」と5文字。さて、どうするか。
1919年。ロメオさんが経営者になったことで、ブランド名がアルファロメオとなり、それに伴って、エンブレムも二代目に変わります。二代目のエンブレムでは、「ALFAーROMEO」と、間にハイフンが入っています。
さて。「ALFA」は4文字、「ROMEO」は5文字、その間にハイフンを入れると、合計で10文字。偶数です。偶数ですから、原則どおりにすれば、左右それぞれ5文字ずつということになり、12時の位置には、初代と同様に、文字が来ないということになります。左側には「ALFAー」、右側には「ROMEO」が、それぞれ配置され、ちょうど12時の位置には、「ー」と「R」の間の空間が位置することになるはずです。
ところが、実際の二代目エンブレムでは、12時の位置に、Rが配置されています。エンブレムの中央の円には、12時と6時とを結ぶ中心線が引かれていて、その中心線の左側に赤十字が、右側には蛇が配置されていますが、Rの左側の縦棒は、その中心線に対してビシッと平行になっています。Rの文字は、ちょうど12時に位置していて、左右どちらかに傾いたりすることもなく、真っ直ぐに表記されています。
原則どおりであれば、Rは、12時の位置ではなく、12時の位置よりも僅かに右側、例えば12時と1時の間ぐらいに位置するはずですが、そうはなっていません。Rを、中心の12時に位置させています。これは、ロメオさんが、自身の頭文字である「R」という文字をちょうど中心の12時に配置したかったためと推測します。「R」は、ロメオさんのイニシャル。そのイニシャルの「R」をセンターに配置することで、アルファロメオというブランドの中心、会社の中心は、自分である、そのような意味を込めたのではないでしょうか。
ところが、Rが12時に配置されたことによって、当然ながらデザインにはしわ寄せがきます。Rを中心にすれば、左側に5文字、右側には残る3文字となり、明らかに左右のバランスが崩れます。いや、崩れるはずです。
しかし、実際のエンブレムでは、始まりの「A」の位置と、終わりの「O」の位置を比べると、それほど変わっているようには見えません。「A」は、9時のちょっと上、「O」は、3時のちょっと上で、ほとんど対称です。仮に、全ての文字を同じ間隔で配置したとすれば、左側の文字数が多いのですから、始まりの「A」は12時からかなり離れた位置に配置され、終わりの「O」は12時に近い位置に配置されるはずです。ところが「A」と「O」の位置はほとんど左右対称になっており、ぱっと見は文字列が上手く左右対称になっているように見えます。これは、どういうことなのでしょうか?
ここで、デザインの工夫を分析してみます。
まず一つは、ハイフンが他の文字よりも小さいというか、幅が狭いものにになっています。感覚的には、他の文字が全角とするならば、ハイフンだけが半角、というような感じです。ハイフンを半角のようにすることで、ALFAの右端のAと、ROMEOの左端のRとの間が広がり過ぎないようにしています。
それから。「ALFA」の4文字については文字間隔を狭めに、「ROMEO」の5文字については文字間隔を広めに設定しています。ALFAは少しだけぎゅっと詰めて、ROMEOは少しだけ間延びさせています。例えば、ALFAのAとLとの間、LとFとの間を見ると、間隔はかなり狭くなっていますが、それに対して、OとM、MとE、EとOのそれぞれの間隔を見ると、明らかに広くなっています。これで左右のバランスをとろうとしています。あともう一つ思っていることがあるのですが、それについては後ほど。
「ALFA」の文字間隔を圧縮し、「ROMEO」の文字間隔を拡大したことで、左右のバランスという点の他にもう一つ、視覚的効果が生まれます。それは、「ALFA」よりも「ROMEO」が大きく、立派に見えるということです。結果的ではあるでしょうが、何か、ALFAが端の方にぎゅぎゅっと寄せられて、ROMEOがドドーンと目立っています。始まりのRが12時のセンターに配置されていることと相まって、ROMEOがすごく目立ちます。これも、狙いだったかもしれません。
この状況は多少変化しつつも、1960年の六代目エンブレムまで続きます。途中、1946年、戦後すぐの四代目エンブレムで、一旦、ALFAとROMEOの間のハイフンがなくなりますが、次の1950年の五代目エンブレムでハイフンは復活し、1960年の六代目エンブレムでもハイフンは維持されています。なお、四代目から六代目では、ROMEOの文字間隔を露骨に広げるということはなくなり、左右の文字間隔の広狭は、多少改善されており、間延び感は小さくなっています。「O」の位置が多少3時よりも上側になったりしていますが、左右のバランスはそれほど崩れてはいません。果たして、ハイフンの半角効果だけで、このようにバランスがとれるものなのでしょうか?
ところが、1972年の七代目エンブレムでは、ハイフンがなくなり、更に、Rが12時よりも左側に移動してALFAの右端のAに近づきます。つまり、「A L F A R O M E O」というように、「ALFA」と「ROMEO」との間にハイフンがなくなっただけではなく、「ALFA」と「ROMEO」の間のスペースも他の文字間隔と同じような大きさとなり、均一?な文字間隔でほぼ均等に配置されるようになっています。厳密には、「ROMEO」の方が若干文字間隔が広めだとは思いますが、これまでのような感じではありません。これは一体どうしたことでしょうか?この1972年あたりに何か社内で変化があったのではないでしょうか?
以前の記事「アルファロメオという名前part2 ~スペースへのこだわり~」でも書きましたが、アルファはこのスペースに並々ならぬ拘りを持っています。ところが、この七代目エンブレムでは、ハイフンだけではなく、スペース自体も消滅しています。エンブレムは会社、車の象徴ですから、これを認めたトップ、指示したトップには、何か心境に変化があったのではないかと推測します。
ハイフンがなくなって合計9文字となったことにより、原則どおりであれば、センターは「R」ということになります。ところがこれも不思議ですが、そのRは、12時には配置されず、12時よりも左側、つまり、11時寄りに配置されています。なぜでしょう?始まりの「A」はちょうど9時の位置、終わりの「O」はちょうど3時の位置で、この配置もこれまでにはないもので、始点と終点は完全に左右対称ですが、なぜかしら、センターに来るべき「R」は、12時にはありません。明らかにおかしいです。
「R」を12時のセンターに配置するという二代目エンブレムからの拘りは、ここでなくなったのでしょうか?もう、ロメオさんに気を遣わなくてもよくなったのでしょうか?「ROMEO」の文字間隔が若干広めであるという点を考慮しても、Rをセンターに配置することは、ハイフンをなくし、スペースをなくしたことで、これまで以上に簡単にできたはずですが、そうはなっていません。
事情は、わかりませんが、何れにしても、「R」という文字はセンターから外れ、でも、始点の「A」と終点の「O」はきちんと9時、3時に配置され、全体としては左右バランスをとっているような、とっていないような、微妙な文字列の配置になっています。それと、この七代目エンブレムについては、もう一つ気が付いたことがあるのですが、これも後ほど。
七代目エンブレムでなくなったハイフンですが、それ以降、復活していません。しかし、スペースは復活しました。
1982年、八代目エンブレムでは、「ALFA」と「ROMEO」の間のスペースが復活して両者離されています。そして、この八代目エンブレムで、「R」のセンター配置、12時配置も復活します。二代目エンブレムで始まった「R」を12時ぴったりに配置するという法則が採用されています。終点の「O」は、始点の「A」に比べると若干上めではありますが、ほとんど同じくらいです。ということは、「ALFA」と「ROMEO」の間にスペースを設けた分、「ALFA」の文字間隔が圧縮され、「ROMEO」の文字間隔が広がったのかというと、うーん、微妙です。すごく差があるようには見えません。微妙な感じです。不思議ですねえ。。。
そして、2015年から採用されている現在の九代目エンブレム。基本的に、八代目エンブレムの感じを踏襲していますが、八代目エンブレムに比べて縦方向に圧縮されたフォントとなりました。「ALFA」の文字間隔はより圧縮されたように見えます。感じとしては、二代目エンブレムに近く、八代目よりも「ROMEO」が目立ちます。フォントの感じも二代目に似ています。
このような感じで結構、変遷しているのですが、また、揺れ動きもあったようなのですが、基本的には、ロメオさんの「R」を中心の12時に据えるというルールがあるようです。現在の社内でも、おそらくそのように認識されていると思います。その根拠は、現在の九代目エンブレムがそうなっているからということもありますが、もう一つ決定的な根拠があります。
それは、七代目エンブレムです。上でも言いましたが、七代目エンブレムだけ、揺れ動きが大きく、ハイフンもありませんし、スペースもありません。実際のエンブレムはそうなっているのですが、ところがです。それをモチーフにした豆皿は、そうはなっていません。
アルファロメオは、創立110周年を記念して、これらの歴代エンブレムをモチーフとした有田焼の豆皿を製作しています。初代から九代まで、全ての豆皿が公式サイトのエンブレムの下側の箇所に載っています。オリジナルとは若干異なっているところもありますが、基本的には、各エンブレムを再現しています。
ところが、七代目エンブレムの豆皿だけは、再現していません。実際のエンブレムではスペースがないにも関わらず、豆皿では、ちゃんとスペースが空けられています。そして、「R」の文字も、ちゃんとセンターの12時に表記されています。おかしいですねえ。本来であれば、オリジナルと同様にスペースを設けないようにしないといけないはずですが、そうはしていません。七代目エンブレムは1972年当時のものですが、この豆皿は、現在のものです。つまり、現在の社内では、七代目エンブレムでスペースを設けなかったのはどうか?と思っているということです。本来であれば、七代目でもスペースを設けなければならなかった、そう思っている。だから、豆皿ではオリジナルと同じではなく、あえて、オリジナルから変更して、スペースを空け、Rも12時に配置した。そういうことと推測します。
ここから何がわかるか。
以前の記事「アルファロメオという名前part2 ~スペースへのこだわり~」でも書きましたが、このスペースには、それほどまでに強い拘りがあるということです。七代目エンブレムのオリジナルではスペースがなくても、復刻というかそれをモチーフにした豆皿にはスペースを入れる。それぐらいこのスペースに拘りがあるということです。理由はわかりませんが。
以前、名前の呼び方に関して「アルファロメオという名前 ~どっちで呼ぶ?~」という記事を書きました。私は、アルファロメオのことをアルファと呼ぶ派です。でも、ALFAとの間にスペースを空け、Rをセンターの12時に配置するということなどから考えると、どうも、アルファロメオは、ロメオさんが中心で、ロメオと呼ぶ方が正式なのではないか。今回、エンブレムの表記を検討してみて、改めてそう思いました。
まあでも、それが正式であったとしても、やっぱりロメオと呼ぶのはちょっと固いし、キザっぽくもあるので、私は、これまでどおり、アルファっと軽く呼びますが。
最後に、もう一つ。
ハイフンを半角にしたり、文字間隔で調整したりと、いろいろとデザイン上のバランスをとるようにしているのですが、それ以外にもう一つ気がついたことがあります。それは。
「O」です。
アルファベットの「O」は、通常のフォントであれば、縦長です。ところが、エンブレムでは、横長のフォントが使用されています。まん丸の円でもなく、横長の楕円です。ROMEOには、「O」が2つあります。この「O」を横長のフォントにすることで、文字間隔だけではなくて、ROMEOの全体の長さを長くしています。
これは意図的かどうかはわかりませんが、少なくともROMEOという部分の長さを確保することには貢献しています。
六代目のエンブレムまでは、下側にMILANOという文字が表記されていました。七代目からはなくなっていますが、そのMILANOという文字でも、「O」は横長のフォントが使用されていました。だから、ROMEOの「O」だけを特別扱いしたわけではなく、むしろ、全体の統一性という観点から、横長フォントを使ったと思いますが、「O」を横長にすることで、結果として、ROMEOという部分の全長が長くなり、左右のバランスをとることにも影響を及ぼしたと、そう思っています。