その車が一台、そこにあるだけで。~風景に溶け込むクーペフィアット~

カーメモリー

最近は、電車での移動が多くなりました。

ある日の夕刻、電車での帰宅途中に駅から家までトボトボと歩いていたときのこと。

私は、比較的交通量の多い二つの道路が交わる交差点に近づいていました。前の信号は青。道路の左側を歩いていました。

すると、後方からちょっといい音が近づいてきました。なんだろうと思っていると、その一台の車は私のすぐ右側を通過して目の前の交差点に進入していきます。

その後ろ姿は、丸いテールランプがとても特徴的で、「これはなんやろう?バルケッタ?」と一瞬思いましたが、屋根はあるし。。。と思っているうちにその車は、ぶん、ぶんと、軽いタッチの柔らかーいシフトダウンでその交差点を左折していきます。

そのシフトダウンがとても印象的で、「こんな軽いブリッピングは聞いたことないなあ。」

これ見よがしではなくて、とても自然で、その瞬間にその空間から消え去るような軽さ。

うまいなあ。

そう感心しているのと、その車がなんやろうと思っているのと、両方の感情の中、その車が左折したことでそのフロントに注視していると、なんとその車はこれまた目(ヘッドライト)に特徴のある、クーペフィアットではありませんか。

なんとなんと。

こんな家の近くで、今時というか、ずーと前からでも滅多にお目にかかることはないクーペフィアットに遭遇するとは。

そのクーペフィアット。とても上手いシフトダウンでするするっと左折したと思うと、そのままとてもスムーズなコーナーからの立ち上がり、という感じで走り去っていきました。コーナリングからの立ち上がり加速は速いけど、でも、頑張ってる感はなくて、比較的ジェントルな感じで、でも、それなりのスピードで消えていきました。

エンジン音、排気音も大きくはなくて、というか全然大きくなくて、むしろ静かなぐらいで、回りの人が気付かない?ぐらいの音です。

それと、色。

クリーム色というか、ベージュというか。なんともこの曇り空と、特徴のない街並みの風景に溶け込んでいて、これまた全然珍しい車、派手な旧車、という感じがありません。この車を知らない人は、その音と共に全くその存在を意識しないかもしれません。そのくらいナチュラルにまわりに溶け込んでいます。

クーペフィアットといえば、イエローなんかの派手なカラーを思い浮かべます。以前、かなり前に一度だけ鈴鹿で見たことがありますが、そのときも派手な色だったと思います。

でも、その交差点で見たクーペフィアットには全く目立つ要素がありません。

音も、色も、そしてブリッピングも。全てが目立つことはなくて、でも、そのデザインだけはオーラを放っている、そんな感じの一台でした。

調べてみると、クーペフィアットのプラットフォームはフィアットのティーポ。つまり、アルファ145とは兄弟車ということになります。アルファ155やGTVも、みな兄弟。でも、デザインはどれも個性的。プラットフォームの制限は大きいですが、ある意味、いい時代。

その交差点。以前、と言ってもかなり前、145を買って数ヶ月後のことですから、今から8年ほど前のことでしょうか。

私の145は買って数ヶ月後に大きなトラブルに見舞われてショップに入院中でした。それなのに、その145と同じ色合いの145が今回のクーペフィアットとちょうど同じような感じで目の前の交差点を左折していったことがあります。その145を見た時、なんで私の145がこんなところを走ってんねん?と、何が起こったのか訳がわからなくなったことがありました。

勿論、私の145であるはずはなく、別の145でしょうが、でも、同じ色味の145がなぜか私の家の近くを走っている。とても不思議な感覚でした。

でも、今回、その交差点で左折するクーペフィアットを見て、おそらく8年前の145も同じ人が運転していたんじゃないかと、そう思いました。その交差点を左折したところから、ずーと先に行ったところに、きっとすごくラテン車が好きな人がいるんです。

その道とほぼ平行に走っている道をよくビートで走っていますが、そのとき、反対側から古いイタ車、ラテンの車が走ってくることがあります。一番記憶に残っているのは、ランチアのデルタ、インテグラーレ。こんな車が走るような道、場所ではないのですが、なぜか、その道には走っていたりします。

クーペフィアットも、デルタインテグラーレも、そして、8年前の145も、全て同じ人が乗っているじゃないかと、勝手に思っている今日この頃です。