その車が一台、そこにあるだけで。 ~ミッドシップオープン MGF~

2021年2月13日
カーメモリー

一台の車がそこに止まっている。一台の車がそこを走っている。その一台がそこに存在していることによって、まわりの風景が変わる。いや、変わっているように見える。少なくとも自分の視界の中では。そういう車の存在って、車好きの人には、少なからずあるのではないでしょうか。

私の場合も、普段見慣れている車が目の前にあっても何も思わないですし、対向車線をこちらに向かって走ってきても、視界には入っているでしょうけれど、何も思わず、心も全く揺れ動かされない。一般的には高級車と言われるような車であるとか、スポーツカーと呼ばれるような車であったとしても、自分としては何も思わないような車もある。

これは、自分の心に響くかどうかという問題なので、他の人がいくら「スゴイ」と言っても、その車に興味がなければ、心には届かず、記憶には残らない。その瞬間が一枚の写真のように切り取られて残ることはない。

そういう車ってあると思います。あくまでも、その人にとって特別な存在であって、世間一般的にどうかというのとは違う次元、パラメータの話。

たまにそういう車に出会って、おおお^-っと思うことがあるので、これは他の人にとってはたいしたことはなくても、自分にとっては滅多にないというかこの先二度と目にすることがないかもしれないので、そういう車との遭遇については、やはり書いておこうと思いました。

第一弾は、ブリティッシュオープンスポーツ、MGFです。ミッドシップでオープン。ホンダビートと同じです。

このMGF、以前、「影響を受けたサイト ~車編part2~」にちょろっと書いたことがあります。ワンダードライビングの動画でも見ましたし、カーグラフィックTVでも見ました。ロードスター、バルケッタと共に三台のオープン特集は、私の永久保存版となっています。ロードスターはFR、バルケッタはFF、MGFはMRと、駆動方式も三者三様で、エンジンは排気量は同じでも性格はぜんぜん違う。なかなかおもしろい企画でした。

MGFはこんな感じで映像の中では何回も見たことがあるのですが、実物は見た記憶がありません。もしかしたら昔に見たかもしれません。でも、目には入っていたかもしれませんが、そうであったとしてもそのときにはMGFという車の存在はよく知らなかったでしょうし、記憶には残っていません。

そういうことって多いです。興味がないときには比較的目にしたりするけれども、興味を持つようになって注意して見つけようとしたら、もう車自体がほとんど残っていなくて、会う機会がない、ということが。だから、興味を持つようになってからその車に遭遇したときの感動は、やっぱり大きい。

先日、阪神から降りていつもの信号で止まる直前に、ふっと二つばかり右側の車線を走る赤い車が視界に入りました。市内のど真ん中、それも平日の朝。赤い車自体、めったに走っていませんから、視界に入った瞬間にとても気になりました。もしかしたら。

私の車とその車との間にはもう一車線あってその車線にも車がありました。そのために、その向こう側にいるであろう赤い車は見えず、信号待ちのときに車種を確認することはできません。

赤い車がいる車線は次の信号で直進用、私の車がいる車線は次の信号で左折用。だから、次の信号で必然的に行き先は別々になります。ほんの50mあるかどうか。その間にどうしても確認したい。

信号が青になって車が進み出したとき、確認できました。
やっぱり、赤のMGFです。うーん、初めて見たかもー。と朝からニヤけながら声を出していました。

仕事用の車、ドイツのプレミアムな車などが多い街中でひときわ目立っていました。高級車がいくらいっぱい走っていても全く目立ちませんが、白い高級車の向こう側に隠れてしまうような小さな、ほんと小さな一台の赤い車がその車線を50m走るだけで、いつもの街並みが全く違って見えます。待っている歩行者の目の前を明るい光を放ちながら、そのMGFは東に向かって走っていきました。

寒い朝ではありましたが、できることなら黒いホロは開け放ってオープンエアーで走って欲しかった。見ている歩行者と同じ空気をまとって。

でも、その一台をたった数秒見ただけで、とても良い朝になりました。おそらく私だけではなく、歩行者の人達も。

赤いMGFのかわいらしいリアが、いつも見るビルと共に、私のメモリーにカシャリと刻み込まれました。